【金子真仁カリフォルニア編Ⅴ】満ちあふれる「どっちもいい」の価値観/連載〈18〉

旅が好きです。日本の全市区町村の97・3%を踏破済みです。その遍歴は球界関係者に興奮されたり、どん引きされたり。かけ算の世の中、野球×旅。お気楽に不定期で旅します。題して「野球と旅をこじつける」。第14回は日本列島を飛び出して、アメリカ合衆国・カリフォルニアへ―。全5回の最終話です。

その他野球

雪玉を何球か

標高2000メートルを超えるビッグ・ベアー・レイクにやって来た。雪が積もっている。とりあえず雪玉を握って投げたくなるのがニッポン男児の性。木に向かって直球にチェンジアップを織り交ぜて何球か投げる。

スキーやスノーボードをするにはバランス感覚や柔軟性が絶望的になく、スノーチューブが楽しい私。タイヤにうつぶせになり、ヘッドスライディングのように雪の斜面を滑り落ちる。体勢を間違えて右太もも裏、よく野球記事で書く「ハムストリング」をつった。今季絶望とまでには至らずひと安心である。

3日前、半袖でビーチヨガで脇腹をつりそうになったのは、直線でわずか120キロ西のハンティントン・ビーチでのこと。これだけ近接した距離で、夏も冬も同居しているのがカリフォルニアのすごさだ。日本から持ち込む荷物を少し増やせば、何でもできる。

だからカリフォルニアは「最高のプレイグラウンド」として、この雄大な〝大人の遊び場〟を全世界にPRしている。

カリフォルニア観光局のプレスツアーは5泊7日の行程だった。個人的に「一生忘れないもの」を3つ挙げるとするならばテメキュラの熱気球、ハンティントン・ハーバーの水路クルーズ、そしてビッグ・ベアー・レイクでのオフロードツアーになるだろう。

小型四輪駆動車が湖畔の街を出発した。私たち8人の参加者は、後方の客車で吹きさらし。片側2車線の公道を音楽ガンガンで走る。鼓動もテンション上がり、寒さを忘れる。

海抜2000メートルを超える冬の山に何のためらいもなく、四駆は入っていく。

託すしかない

ヘアピンカーブをわざと大回りして傾斜をつけながら豪快に曲がっていく。「これ、本来はジェットコースターの動きなんじゃ…」とか思うけれど、そんなことつぶやいたところですでに無事の帰りをドライバーに託すしかないのは、熱気球とまるで同じだ。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。